アルコール依存症
夫がお酒を毎日飲んでいて、やめるように言っても、やめれないようなんです。これはお酒に依存しているんでしょうか?
アルコール依存症とは、簡単に言うと「お酒がコントロールできなくなった状態」です。今回のようにお酒を減らすように言われて、やめようと思ってもまた飲んでしまって罪悪感を感じたり、朝から飲むようになったり、仕事や家庭での生活に支障が出る、手が震えるなどの離脱症状がみられる場合に診断されることがあります。
会社の検診でも、いつも肝臓の数字が高いといわれたようで・・・
「酒は百薬の長」とよく言われますが、実は「酒は百薬の長、されど万病の元」と続くのです。世界では健康な寿命を縮めてしまう原因として、1位の低体重(貧困)、2位のエイズに次いで、3位が飲酒とされています。お酒が肝臓を悪くすることは世間一般にもよく知られていますが、実は肝臓だけでなく、膵臓や胃など全身の60か所以上に病気を起こすと言われています。また、アルコールは発がん物質であり、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肝臓がん、大腸がん、乳がんのリスクを高めることが分かっています。
癌になるのは知らなかったです。怖いですね。どんな治療をするんですか?
治療の3本柱というものがあります。
- まずは通院で、対話を通じて、お酒について考えます。
これまでのお酒は、晩酌のように習慣として飲んでいた場合もあれば、仕事で必要だった場合もあります。また、家庭や職場でのストレスを自分の中で飲み干すためにお酒を飲んでいた方も多いです。「お酒が悪い」という単純な構図でなく、今までの人生の中で、どうしてお酒が必要だったのか。お酒を飲むことでのメリット、デメリットなども診察で考えていきます。 - お薬の治療です。
- 点滴
飲酒量が増えた生活を送っていると、肝障害・栄養障害・ビタミン欠乏・脱水・電解質異常などが起こっています。点滴で、肝機能改善薬やビタミン類などの投与を行います。 - 向精神薬 離脱症状を軽減する薬を使用します。離脱期を過ぎても、不眠・不安・気分障害などの精神症状があれば、使用することがあります。
- 抗酒剤
抗酒剤は、アルコールの分解を抑える薬です。抗酒剤を服用しながら飲酒するとひどい悪酔い・二日酔い状態となるため、危険です。そのため、それをしっかりと理解して抗酒剤を服用しておくことにより、飲みたい気持ちに歯止めをかけることができます。 - 断酒補助剤
飲酒欲求を抑える断酒補助剤(レグテクト錠)が2013年に発売されました。飲酒欲求をゼロにしてくれるわけではありませんが、他の治療をしていても、飲みたい気持ちが強い場合、補助的に使用します。
- 点滴
- 当クリニックでは自助グループも提案させていただきます。
「断酒会」や「AA」などの自助グループは、医療機関とは別に酒害者が主体で運営しており、酒害体験談を語って相互に助け合い、断酒継続を目指すグループです。 自分の体験談を話すことで、いままでのお酒でどんな害があったかを整理、振り返ることができます。また、同じ病気の仲間ができること(断酒仲間)も重要です。
いろいろとあるんですね。
でも、そもそも、なかなか受診してくれないんです・・・
本人にとって、「お酒を完全にやめさせられるんだろうか。自分には酒なしでの生活なんて考えられない・・」と考えてしまうので、不安を感じることは当然です。当クリニックでは、もちろん「断酒=お酒を一滴ものまない」ようにできれば一番よいと考えていますが、「お酒を完全にやめることはできない、でもお酒での問題は自覚している」と考えている方への節酒の支援も行っています。
仕事や家庭状況、身体的な状態を評価し、少しでもお酒を減らして、良い生活にしていきましょう。
まずは検査だけでもお願いしたいです。そのうえで、本人と話し合ってみます。
そうですね。まずはご相談だけでも気軽に来てくださいね。